円形脱毛症におけるステロイドパルス療法について

経過

ステロイドパルス療法

今回は、円形脱毛症におけるステロイドパルス療法について、病院の同意書の説明文と主治医から説明を受けた内容、さらに私の薬剤師的な観点からも含めて、ざっくりまとめたいと思います。

円形脱毛症について

円形脱毛症は、自分のリンパ球が自分の毛根を攻撃して、毛が抜け落ちてしまう、自己免疫疾患(自分の免疫が自分を攻撃してしまう病気)と言われています。

単発型の円形脱毛症は、ほとんどが1年以内に治ります。

多発型や、頭髪以外の毛が抜けたり(汎発型)、慢性化・再発したりする重症の円形脱毛症もあり、重症化すると治りにくくなる場合が多いです。

今のところ、特効薬はなく、確実に治癒できる治療法はありません。そんな中、ステロイドパルス療法は、早期に行えばかなりよくすることができる可能性のある治療法です。

ステロイドパルス療法とは?

ステロイドパルス療法で使用されるメチルプレドニゾロンという薬は、もともと体内の副腎という臓器で作られているホルモン(副腎皮質ホルモン剤)で、炎症や免疫を抑える作用があります。

パルス療法は、ステロイドを3日間多量に投与する治療法で、円形脱毛症の他にもたくさんの病気に使われることがあり、呼吸器系や腎臓の病気、関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病等、いろいろな治療に用いられます

円形脱毛症のガイドライン上では、発症後6か月以内の急速に進行する脱毛面積25%以上の成人(16歳以上)症例に用いてもよいとされています。

1990年代から、円形脱毛症にステロイドパルス療法を試みたという論文が、国内外から報告されてきたようで、それらの報告から、現在、多発型で発症して間もない症例には最も効果がある治療と考えられています。

しかし、円形脱毛症に対する、ステロイドパルス療法の作用は、まだ十分には解明されていません。

飲み薬の数十倍のステロイドを大量に短期間点滴することによって、毛包を攻撃する異常なリンパ球が増えるのを抑制する効果や、異常なリンパ球を死滅させる効果が予想されています。これらの効果は、通常量のステロイドにはない効果です。

また、自己免疫疾患は、早期に強い治療をしておくと、悪循環に陥ることがなく、長期的にみると病気の経過がよくなるという考えがあります。さらに、大量とはいえ、短期間の治療なので、ステロイドの長期投与に伴う副作用を回避できるとの考えもあります。

ステロイドパルス療法の効果は?

発症から6か月以内で、急速に進行していて、脱毛が多発している症例では、有効率は60%以上とされています。

急性期症例は再発率が低く、円形脱毛症を治せる可能性があります。

治療がうまくいくと、ステロイドパルス療法を始めてから、2~3か月目から毛が生えてきます

ステロイドパルス療法の副作用は?

ステロイドを大量に点滴する治療ですが、短期間のため、副作用は比較的少ないです。

私の通っていた大学病院では、重篤な副作用が出た症例はないそうですが、一般的に報告されているものとして、不整脈、骨粗鬆症、骨頭無菌性壊死、感染症の誘発、血栓症などがあります。

よくある軽い副作用としては、一時的な不眠、血圧上昇、頭痛、ほてり、味覚異常(金属のような味)、食欲増進、発熱、倦怠感、消化器症状などがあります。

また、ウイルス性肝炎の患者さんは、劇症肝炎を誘発する危険があります。

その他の副作用として、血糖値上昇、電解質異常、消化性潰瘍の誘発、精神神経症状なども可能性があります。なので、糖尿病、心不全や不整脈、消化性潰瘍、感染症の患者さん、精神症状(うつ病など)の既往がある方は、慎重に投与の可否を判断する必要があります。

これらの副作用等、問題が起きた時にはすぐに対応できるように、原則として入院となります。

パルス療法後の治療法は?

私の通っていた大学病院では、パルス療法後3か月間は、治療効果をみるために経過観察するとのこと。

3か月経って、パルス療法の効果がなかったと判断した場合や、ステロイドパルス療法で一旦生えてきた毛が、パルス療法を終了した後に再脱毛する場合には、別の治療に切り替えるか、もう一度ステロイドパルス療法を行うことがあるようです。

参考:日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版

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